WordPressを利用してWebサイトを立ち上げるためには、適切なサーバーやサービスを選ぶことが必要です。
しかし、どのようなサーバーやサービスを選べばよいのかは、初心者にとって難しい問題です。
この記事では、WordPressサイトを運営する上でのサーバーに関する基本的な知識や、過去の事例をもとに、わたしがどのような基準でサーバーやサービスを選んでいるのかを紹介します。
もちろんベース部分のみの紹介ですので、全てがこの通りに考えているというわけではなく、状況に応じて臨機応変な提案を行っています。
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なぜWordPressを利用するのにサーバー選びが重要なのか
WordPressが使えると書いてあればどこも同じだろうと考えて、「適当に見つけたブログにオススメって書いてあったからそこにする」というケースは非常に多く、あとになって後悔するということも少なくはありません。
WordPressには利用推奨環境というものがあります。
プラグインやテーマはこの要件をベースに開発されているものがほとんどで、サーバー側の環境がこの要件から外れてしまっている場合、WordPressを最新版にすることができなかったり、テーマやプラグインの利用ができなかったりします。
これらはセキュリティにも関わっており、古いPHPを利用し続けることでセキュリティのリスクも上がっていきます。
また、サーバーやサービスによって表示速度や処理限界などパフォーマンス部分でも大きく変わってきます。
ただスペックのいいものにするという選択をしてしまうと、コスト面で大きな負担になってしまうケースもありますので、Webサイトや成長に合わせて適切なサーバーを選択することが重要になります。
サーバーやサービスの基礎知識
サーバーやそのサービスの特長などをサービスサイトなどで確認しても、基本的な知識がないと自分がほしいサービスであるかの判断ができません。
そこで、最低限ではありますが基礎知識の紹介をしておこうと思います。
サーバーの種類
一般的に利用されるレンタルサーバーやクラウドと呼ばれているサービスなどがありますが、何がどう違うのかを明確にイメージできない人も多いかと思います。
特にVPSやクラウドは対応できるWeb制作者も多くはないので、契約の前には十分注意しましょう。
共有レンタルサーバー
一般的にレンタルサーバーと呼ばれる形態のサービスです。
多くの契約をひとつのサーバー内に収めているため、比較的低価格で提供されていますが、複数のWebサイトがひとつのサーバー内で動作しているため、高負荷なWebサイトの場合にパフォーマンスが低下する可能性があります。
サービスによっては高負荷時にリソースのブーストができるサービスもあります。
マネージドレンタルサーバー
ひとつのサーバーをまるごとレンタルサーバーのように利用することができるサービスです。サーバーの保守や管理などはサーバー提供会社が行ってくれるため、共有レンタルサーバーの上位版であると考えてもいい使い勝手になっています。
安価とはいえませんが、複数のWebサイトを管理したいというような場合、共有レンタルサーバーを利用するよりも安定した運用が可能になります。
VPS(仮想専用サーバー)
ひとつの物理的なサーバーを仮想的に分割して複数のサーバーとして利用できるようにしたサービスです。
リソースはそれぞれのサーバーで独立して設定されているため、共有レンタルサーバーに比べ同じ物理サーバー内の他仮想サーバーの影響を受けにくいのが特長になります。
価格も比較的安価で提供されており、リソースに関してもあとから上位プランに変更できる形態のものもあるため、うまく利用することでその恩恵は非常に大きなものとなります。
ただし、仮想サーバーの管理や保守は契約者がおこなう必要があるため、技術や知識がないとセキュリティリスクを負うことになります。そのような場合は外注で保守・管理・メンテナンスを任せることになるでしょう。
クラウドサーバー
一般的に複数のサーバーをひとつのサーバーとして仮想的に統合し、仮想サーバーなどのインスタンスを柔軟に利用できるようにしたサービスです。
VPSと比べ、スペックの変更やネットワークの構築が柔軟に行えるため、複数台の構成やバックアップ体制の構築などが必要な場合に利用します。
価格はVPSと比べれば高価になるため、リソースを柔軟に変更したいような場合のみクラウドを使うのがいいでしょう。
クラウドもVPSと同様、仮想サーバーの管理や保守は契約者がおこなう必要があるため、技術や知識がないとセキュリティリスクを負うことになります。そのような場合は外注で保守・管理・メンテナンスを任せることになるでしょう。
専用サーバー
物理的にひとつのサーバーを専有して利用することができるサービスです。
スペックも高く多くのリソースを利用することができるため、大量のトラフィックをさばいたり複雑なアプリケーションを実行するような場合に有用です。
その分高価であり、VPSやクラウドと同様にサーバーの設定やメンテナンスは契約者が行う必要があります。乗せるアプリケーションも複雑であることが多いため、より専門的な知識や技術・経験などが必要になってくるでしょう。
SaaS型のWordPress
サーバーの種類とは違いますが、WordPressそのものを利用できるように貸し出してくれるようなサービスもあります。
WordPress.comが有名なところかと思います。
他にもShifterというWordPressを利用し静的なHTMLを出力させてホスティングするというようなサービスもあったりしますので、用途に合わせて利用することができれば、非常に有用です。
パフォーマンス
Webサイトのパフォーマンスはユーザーの利便性や検索エンジンからのクロールなどに影響します。
そのため、サーバーを選ぶ際にはWordPressでどれだけのパフォーマンスが出るのかにも注目する必要があるでしょう。
処理速度
WordPressの処理速度に影響するのは以下の要素になります。
- PHPのバージョン
- 一般的に新しいほうが高速
- WordPressの推奨環境に注意
- ストレージ
- HDDよりもSSDのほうが高速
- CPUコア数
- 一般的にコア数が多いほうが処理能力が高い
- CPU自体の処理能力の差もある
- メモリ
- 多いほうが高速
- メモリ自体の処理能力の差もある
通常は新しいサービスでスペックの大きいものであれば、より処理速度が高いと考えていいかと思います。
転送量・帯域幅
見落としがちなのがこの転送量や帯域幅です。
Webサイトのトラフィックをどれだけ捌くことができるのかの目安になるものになります。
何らかの理由でトラフィックが急増した際に帯域幅が小さいと、Webサイトにアクセスできないという状況に陥ってしまうことになります。
Webサイトへの入り口の広さと考えると、イメージしやすいかもしれません。
その他の補助機能
処理能力以外にも静的なファイルをキャッシュしてくれるような機能や、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)が利用できるようになっているものなど、高速化に関する別の機能が提供されているようなサービスもあります。
また、KUSANAGIというWordPressを高速に実行することに特化した環境もあります。レンタルサーバーでその技術が反映されているものや、VPSやクラウドでその環境自体の利用をすることも可能になっています。
セキュリティ
Webサイトのセキュリティは、閲覧者の個人情報や運営側の信頼性を守るために非常に重要な要素となっています。
サーバーやそのサービスを選ぶ際にもどのようなセキュリティ関連の機能が利用できるのか確認しておきましょう。
無料SSL証明書(Let’sEncrypt)が利用できることはほぼ必須の条件になっているかと思います。HTTPS通信により、Webサイトと閲覧者の間の通信を暗号化することができ、個人情報や重要なデータの保護に繋がります。
また、WAF(Web Application Firewall)が利用できたり、改ざん検知機能がついているサービスもあります。
さらに、バックアップを自動で定期的に保存してくれているサービスもあるため、いざという時にリストアできるという安心感を得られます。
VPSやクラウドでも同様の機能がついているものもありますが、基本的な対策は運用側がおこなうことになりますので、定期的なメンテナンスを含んだ運用体制を作ることが重要になってきます。
サービスを提供している企業自体の信頼感というのも重要になってくるかと思いますので、その企業が正しくWordPressの情報を取得できているのかどうかも指針の一つになりうるでしょう。
積極的にコミュニティに参加している企業はそれだけ最新の情報を得ていると考えてもいいと思います。
サポート
Webサイトの運営で一切問題が起こらないということはないかと思います。WordPressのどの部分で問題が起こっているのかを判断するのは難しいですが、それがサーバーに起因するものということもあります。
そのような際に、サポートがどのようなアプローチを取ってくれるのか、どのような体制で対応してくれるのかというのは非常に重要です。
とはいえ、Webサイトのことを何でもかんでもサポートしてくれるようなサービスはないでしょう。
あくまでもサーバーに関する部分のみです。
問題の切り分けができないということであれば、詳しい人に調査してもらいサポートとのやり取りも任せたほうが賢明です。
価格
Webサイトの運用に問題が出ないように価格を考慮する必要があります。
初期費用や基本料金、その他オプションにかかる料金など、総合して考えましょう。
また、VPSやクラウドを利用する際に管理できる技術を持った人が内部にいない場合は、管理を外注することも予算として考慮しておく必要があります。
VPSは共有レンタルサーバーど同じくらいの価格帯で利用することができますが、上記の理由によりマネージドレンタルサーバーよりもコストがかかってしまうということがあります。
安ければいいというものでも高ければいいというものでもないということも理解しておきましょう。
サーバーやサービスを選ぶポイント
必要なのはどのような目的のWebサイトであり、どのように運用していきたいのかを明確にし、そのためにどんな機能がほしいのかをある程度固めておくことになります。
漠然としているような場合は、負担がかからないようにスモールスタートを心がけると良いでしょう。
運営中のWordPressサイトでサーバーに不満があるというような場合、WordPressの実装自体に問題を抱えているケースも少なくはありません。
総合的に判断ができるWeb制作者・制作会社に相談し、根本的な解決を目指すことをオススメします。
ブログに書いてあったから選んだというような安易な選択は避けたほうが賢明です。
事例から見る選び方
具体的にどのようなケースでどのようなサーバーを選べばいいのかを紹介します。
すべてがこれに当てはまるというわけではなく、様々な要因が絡んでくるため、困ったら相談していただければと思います。
一般的なコーポレートサイトの場合
- お知らせ
- 商品(サービス)情報
- お問い合わせフォーム
- それ以外が10ページくらい
共有レンタルサーバーで十分です。
ただし、Web制作会社などにもSSHアカウントなどを発行する必要が出てくるため、上位プランを利用しておいたほうが安心です。
複数のコーポレート・サービスサイトがある場合
- 一般的なコーポレートサイトの規模のものが5つ以上
このような場合はマネージドレンタルサーバーを利用するといいでしょう。
ひとつのWebサイトにトラフィックが集まったとしても、一般的なコーポレートサイトやサービスサイトのレベルであれば、十分捌けるだけのスペックはあります。
とはいえ、100サイトとか詰め込むとさすがに厳しいので、限度はあることは理解してください。
EC機能のあるサイト
- WooCommerceなどでEC機能をつけてあるサイト
VPSやクラウドの利用を検討してください。
そのコストが掛けられないようであれば、WordPressにEC機能をつけるのではなく、SaaSやASPなどを利用し、EC機能を利用できるようにしたほうが賢明です。
メディアサイト
- 多くのユーザー向けに運営するメディアサイト
転送量や帯域幅を考慮しつつ、共有レンタルサーバーから始めるといいかと思います。
このようなサイトは、アクセスが増えるに連れてどんどんサーバーを乗り換えていくような成長の仕方をしていきます。
ある程度、アクセスが見込めコストもかけられるようになったらVPSやクラウドを利用し、更に成長を促すということもできますので、サイトの育ち具合でオススメするサーバーやサービスが大きく異なります。
まとめ
このように、WordPressを利用する際のサーバーやサービスを最適なものにするには、いろんな知識や経験が必要になってきます。
自分がどのような要望を持っているのか曖昧なこともあるかと思いますので、ぞのような際はぜひご相談ください。
また、一度選んだらそれで終わりということもありません。
Webサイトは成長するものです。その成長に合わせて適切なサーバーに切り替えていくことも重要であると知っておいてください。
適切なサーバーを選ぶことでWebサイトの運用に集中しビジネスの発展を目指すことが可能になってくるのです。
付録(個人的に利用をオススメする企業・サービス)
ここに紹介しているサービスは積極的なサポートが可能です。
もちろんここにないサービスも対応は可能ですので、まずはご相談ください。
ホスティング
- さくらインターネット
- さくらのレンタルサーバー
- さくらのVPS
- さくらのクラウド
- さくらの専用サーバー
- エックスサーバー
- レンタルサーバー
- ビジネス(法人向けレンタルサーバー)
その他
- KUSANAGI